大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和49年(ツ)112号 判決 1975年1月29日

上告人

阿部市郎

右訴訟代理人

飯塚信夫

被上告人

松金勝郎

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

本件上告理由は別紙に記載のとおりである。

《上告理由第一点、第二点、第三点の一に対する判断省略》

上告理由第三点の二について。

原判決が被上告人の上告人に対する主張事実の認定資料として第一審および第二審ともに上告人と共同訴訟人の立場にあつた第一審被告風間の提出にかかる丙第一、第二号証を証拠として挙示していることは所論のとおりであるが(原判決書一九丁裏八、九行目)、共同訴訟においては直接対立関係にない他の当事者の提出した書証であつても、形式的証拠力が認められる以上、これを他の当事者に対する関係でも証拠として援用しうるものと解するを相当とするところ、原判決は右丙号各証が第一審における第一審被告風間本人の尋問の結果により真正に成立し形式的証拠力を有するものと認めているのであるから、原判決が右丙号証を上告人との関係において事実認定の資料として援用したことは何らの違法はなく、論旨は理由がない。《以下、省略》

(畔上英治 岡垣学 唐松寛)

(別紙)上告理由

第三点 原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反がある。

一、<省略>

二、原判決は上告人のため証拠調が為されなかつた証拠を採証の用に供しておるので民事訴訟法第一八五条に違反する。即ち原判決は被上告人の請求を認め上告人の主張を排除した重要な証拠の一つとして丙第一、二号証を挙げておる。然しこれは風間より被上告人との訴訟関係につき証拠として提出されたものであつて上告人のため提出されたものでない。従つて上告人はその証書に対する認否さえもしておらないのであつてその内容を知る機会さえなかつたものである。唯丙第二号証は第一審で本人訊問につき示されているがそれだからといつて上告人のために証拠調があつたとはいえない。而も丙第一号証は尚更である。証拠共通の原則があるといつても現在までの判例の説示するところでは対立当事者間のことであつて本件の如く全く上告人のため提出されなかつた証拠を証拠共通の由を以て採証の用に供することは許さるべきことではない。

以上原判決は種々の違法があるので破毀さるべきである。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例